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残暑見舞い&秋のコレクション

センシティブな内容の可能性
センシティブな内容の可能性
冬木ちゃんねる講座もどき+α
後輩探索
藤丸立香が後輩と再会するための物語⑯
 ──選んだ責任はずっと肩に乗っていた。 『多くのものを踏みつけて、多くのものを置き去りにして、それでも自分を肯定できる“何か”がある』  ──置き去りにしないよう手を伸ばして。 『人から見れば、取るに足らない、くだらない理由でも。それだけを信じている。それだけが信じられる』  ──取りこぼさないよう抱きしめた。 『鐘の音は、やがて自らの内に響くでしょう』  ──明日も、明後日も、その先も生きるために。 『じゃあ、輝ける星の話も?』  ──あの子も、君も、私も。 『ああ。君のそういうところ、僕は本当に嫌いだなあ』  ──一等輝ける星を追いかけたんだ。 これは、君との再会の物語 拾陸  夏油の皮を被った“何か”と対峙する五条は迫り来る特級呪霊を一度のモーションで祓う。瞬く間に塵と消えゆく呪霊の先に佇む男へ、今度は五条から距離を詰めた。 「さっさと答えろ。お前は誰だ」 「しつこい男は嫌われるぞ、悟」 「だから……、」  組まれる指先。解放される呪力。 「お前が僕の名前を呼ぶなって言ってんだよ」  コンクリートを抉り、ビルを薙ぎ払うほどの圧倒的な威力。しかしそれでも男を仕留めることは出来なかった。トン…と重力を感じさせないよう柔らかく地面に着地し、視界を覆う土煙を腕の一払いで一掃する。明瞭になったその先で、夏油を名乗る男は頬をグッと吊り上げて嗤っていた。 「さっさと答えろ。お前は何者だ」  蒼眼がひたりと夏油を捉える。二人の間を風が吹き踊った瞬間、男は額に手を伸ばして指先でそれを摘まむ。ピーッと引っ張り、そして。  菓子缶の蓋のように、頭をパカっと取った。 「何で分かったんだよ」  眉間に皺を寄せながら嘲笑う男の頭部には剥き出しになった脳には口のようなものがあり、ギラリとした歯が並んでいる。  あまりにも異常な事態に五条は今度こそ目を瞠ってそれを見た。 「お前…何だ…?」  男はニィ…と不気味に笑った。 ・ ・ ・  呪いを浴びても立ち続ける立香を、真人は今度こそ気味が悪い眼差しで見つめた。その間にも己の魂は黒白の稲妻に囚われ続け、今この瞬間もギチギチと締め付けてくる。しかも無理に魂の形を変えたせいでより限界が早まった。  「…クソが」ああちくしょう、眩しいモンを見たせいで目が焼けて仕方がない。人の負の感情から生まれた自分にとって、彼女の在り方に近づけたからこそやり難くなる。  善も悪も丸ごと包み込んでしまえる彼女の傍は、どうしてこんなに居心地がいいのだろうか。 「何で、そこまでしてあの人間を探してんの?」 「なんでって…わたしのだいじな後輩だから」 「…え、それだけ
赤塚島忌子失踪事件
拝啓 イヤミ様 突然の手紙を差し上げる失礼をお許しください。 高名な私立探偵として名を馳せる貴方様に、どうしてもお願いがあってこうして筆を執った次第でございます。 実は、僕の兄を探して欲しいのです。 仔細あり、詳しい事情を手紙に書くことは適いません。 僕には風の便りにお噂を聞いた貴方様を頼ることしか出来ないのです。 ですが、藁をも縋る僕の依頼をお聞き届けくださるのでしたら、謝礼はご希望以上に支払う用意がございます。入用の物は全てこちらで手配させていただきます。 不躾なお願いであることは重々承知しております。 それでも、どうか、どうか僕の兄を救ってください。 敬具 差出人の名前はない。 こちらの住所のみ書かれた封筒に、手紙と共に同封されていたのは二人分の旅券と乗船券。 船の行き先は、東京都に属する有人島である赤塚島と書かれている。 松竹梅ビルヂングの三階に居を構える探偵事務所の所長・イヤミは朝からその不思議な手紙を広げては閉じ、また広げては閉じを繰り返していた。 「いつまで悩んでんだよ」 アンティークとは名ばかりの、中古で安く手に入れた執務椅子に腰かけるイヤミに声をかけたのは、対面式ソファーで新聞を読んでいた探偵助手のチビ太である。 「受けりゃいいじゃねーか、その依頼」 手紙の差出人はどんな風の噂を聞いたのか知らないが、イヤミは「高名な私立探偵」ではない。 いいとこ『冴えない貧乏三流探偵』である。松竹梅ビルヂングで探偵業を開業して以来、持ち込まれた案件はペット探しや浮気調査、婚約者の素性調査に身辺保護、と非常に地味だが業界としてはメジャーなものばかり。ミステリー小説や映画で取り上げられる殺人事件や正体不明の犯人の追跡など名を上げるのに華々しい事件など、とんと縁が無いのが世の常だ。 だからこそ、今回の『行方不明の兄探し』にチビ太としては期待する何かがあった。 平凡な一般市民だったチビ太は勧善懲悪を信仰しているところがあり、いつか自分が誰かの役に立つような大業を成し遂げたいと夢見ていた。数年前に腐れ縁のイヤミが何を思ったのか突然探偵になると言い出した時、当然周囲の人間はやめておけと釘を刺したのだが、チビ太だけは全力でイヤミを後押しした。これが勧善懲悪への道だ、と無理やりイヤミの元へ押しかけて探偵助手という地位を手に入れて以来、チビ太は世のため人のために身を粉にして働いている。 だが、舞い込んでくる仕事は地道な調査ばかり。旧家の密室殺人も華族の陰湿舞踏会とも一切縁が無く、些か刺激の少ない毎日にチビ太は飽き飽きしていたところだったのだ。 予兆もなくやって来た手紙。 詳細の書けない事情。 周囲を頼ることの出来ない名無しの依頼人。 絶海の離れ孤島。 これだけ怪しげな匂いのする依頼がこれ
君の未来に幸あれ
==魔界== 王座を巡る魔物達の戦いから長い時が経った。 戦いを制して「優しい王様」として魔界を束ねるガッシュ・ベルはベリエルとそれに協力したワイグ達侵略者を倒し、魔界に平穏をもたらすことに成功。竜界や魔法の国とも提携して、間接的にではあるが地球の平和を守るために貢献を続けている。 パートナーであった清麿をはじめとした仲間達との出会いもそうだが、彼の右腕は、その手にいつも握られていた四角い箱だった。 「ウヌ。人間界から持ってきた物のおかげで補強ができたのだ。これでまた一段とたくましくなったのう、バルカン!」 そんな彼に話しかけたのは人間界に降り立った時の自分と同じくらいの小さな男の子だった。 「父上…、いえ陛下。誰とお話なさってるの?」 「おぉ、ザーチではないか。今は父と呼んでも構わぬぞ?」 ザーチ・ベルは幼馴染であり王妃でもあるティオとの間に生まれた愛の結晶。幼いながらにバオウの力を将来的に受け継ぐと言われ、剣術も凄腕の王子だった。 「修行はどうであった?」 「ブラゴ師匠からはだいぶマシになったとお褒めの言葉をいただいたよ。なれども…」 「なれども、どうしたと申すのだ?」 「あの剣がかように重いとは知らなかったよ」 「当たり前なのだ。父もティオ…コホン、母上も抜くことが叶わなかった名剣をお主が抜いたときいた時は、肝を冷やしたがのう」 ぼろぼろになった息子を見て、わしゃわしゃ頭を撫でる。 「ブラゴ殿は偉くて強くて誇り高い存在なのだ。修行は厳しいかも知れぬが、最後まで諦めずにやり抜くのだぞ?獄におる魔物達を治める合間に来てくれるゆえのう」 「ごく?」 「魔界や他の世界で悪いことをした魔物達が、自分たちがしてしもうたことを反省するためにいくところだ。人間界では刑務所と言われておる。お主も真面目に優しく人や土地を大事にしなければそこで長い時を過ごすことになるのだぞ?」 「よくわかり申した。魔物として正しくどんな時も嘘や不正はいたしませぬ」 話はガッシュの親友に移っていった。 「時に父上、机の上にあるその箱はいったい?」 「ウヌ。これはバルカンと申して、父がまだお主と同じくらいの時に人間界に行ってのう。その時に本の持ち主だった友達が留守番をする父のために造ってくれた物なのだ」 「ただの菓子箱のように見えるけど…」 「あなどるでないぞ?これは人間界と魔界をつなぐ宝物なのだ」 「つなぐもの…とおっしゃると?」 「その答えは、人間界へ行く扉が再び開く時に分かる。遠くない未来、必ずお主とその友達が人間界に行く時がやってくる。私や母上の知り合いがパートナーになるかまでは分からぬがのう。そこで友達や宿敵と出会い様々な関わりを経験することで、このバルカンは重要な存在になってくる。今のお主にまだ、難しいかも知れぬが」
金色のガッシュベル こぼれ話
開幕!魔界大運動会!!!
==魔界== 魔界の王を決める戦いが幕を降ろしてから数ヶ月の時が流れた。 季節は 紅葉の色づく秋になり、魔物達もそれぞれの日々を過ごしていた。 王宮では、魔王・ガッシュ・ベルが今日も公務に励んでいた。内容は季節の目玉行事についてである。 「ウヌゥ…、春は園遊会、夏は納涼祭、冬は忘年会と祝賀会か…。問題は秋だのう」 資料に目を通しながら季節の行事について考えていると、人間界にいた時の出来事を思い出した。 「そう言えば、清麿が言うておったのう…。9月になったら、‘’運動会や文化祭などで学校中が盛り上がる‘’と」 そこへ、ファウード戦で共に戦った腹心の部下である魔物・アースがガッシュの前に進み出た。 「陛下、恐れながら申し上げます。それがしがパートナーのエリーから聞いた話によると、人間界では4年に1度、‘’オリンピック‘’なる大がかりな運動会が開催されるとのことです」 ガッシュはアースの言葉に胸を躍らせ、目をキラキラと輝かせた。 「ヌ…、‘’オリンピック‘’とな!?」 クリア戦で共に戦ったアシュロンも続く。 「しかも、競技で良い成績をとった者にはピカピカと輝くメダルが手に入るとのことだ。陛下、オレもこれは名案だと思うが?」 しばらく考え込むガッシュ。夏の暑さも落ち着き、身体を動かすには絶好の機会と言えるだろう。スクッと玉座から立ち上がり、威厳あふれる声を張り上げた。 「ウヌ!運動会で秋を楽しむのだ!誰ぞ、大きめのモゾウ紙を持ってきてくれぬかのう!?」 モゾウ紙を持った1人の老婆がそれをうやうやしくガッシュに手渡した。老婆はガッシュの元養母であり、現在は王宮の給仕として働くユノである。 「陛下…。お待たせいたしましたじゃ…」 「ありがとうなのだ、ユノさん」 ガッシュはモゾウ紙を受け取り、20色の色 鉛筆と判子で何かを書き出した。日頃の公務と学校での授業によって鍛えられた速筆ぶりで、手際よく仕上げていく。 数分後、一息ついてモゾウ紙を高くかかげた。 「出来たのだ!!!」 モゾウ紙には色とりどりのボールやレーン、リングが書かれていた。1番上には 文言が書かれている。 『魔界大運動会!!開催決定!! 参加者、アイディアを募集する。目安箱にて承る』 「これを皆で魔界中に貼り付けるのだ〜!!」 「 御意!!」 ガッシュとアースら臣下達は、魔界中を走り回り、学校、図書館、広場などの施設にそれらを貼り付けて宣伝するのだった。 そして広場には、バルカン300そっくりなポストのような置物が見えた。ガッシュの即位後に、魔界をより良くするために設置した‘’目安箱‘’である。 「楽しみだのう。運動会が成功すれば、魔界中が盛り上がること
流石に象牙のペンは使わない
【起】承転結 「そうだな。確かに武勲ある王子であるアルジュナやバラモンであるアシュヴァッターマンなら兎も角、オレのような凡夫が英霊としてサーヴァントとなりえたのは、偏にマハーバーラタの物語を語った聖者ヴィヤーサとそれを書きしたためたガネーシャ神のお陰と言えるだろう。なるほど確かにあの二人には深い感謝をせねばなるまい」  そう言って深く頷く施しの英雄に作家たちは首を傾げた。場所はカルデア図書館の一室。作家鯖たちに言わせれば、書斎、執筆部屋と呼ばれる、言葉を司るサーヴァント達の溜まり場。  ことの始まりは、疲れ果てた作家の世迷言からだった。  曰く、何故、サーヴァント、しかも大半がキャスターであるはずの自分達は、何故未だペンを握り紙をめくって物語を書き連ねているのだろう。図書館司書である紫式部も電子ベースの物語を紙の本の形にすることはできるが、作家の脳内にしかない物語を本にすることは出来ない。当然のことと言えば当然のことである。  しかしだ。読者が思う以上に「書く」と言う作業は重労働なのだ。それは、筆であれ、羽ペンであれ、万年筆であれ、ポールペンであれ、タイピングであれ変わらない。しんどいのだ。見た目以上に、しんどいのだ。  そもそも、作者からして見ればもう結末まで知っている物語を何度も何度も何度も推敲して文字に起こして読み直しての繰り返し。もういい加減飽きるのだ。せめて書き起こしだけでも自動化されないものか。絵本の中の魔法使いのように指を動かしたら勝手にペンが紙の上で踊りだせばいいのに。  結論、物語るだけで、物語が文章になればいいのに。  そんな全国の読者が聞いたらショックを受けそうなことをその姿に似合わない低い声で歌い上げるように語った青い髪の童話作家に、その場に集まっていた作家系サーヴァント達は惜しみない拍手を送った。  傍から見たらただただ文字を書いているに過ぎない故か、毎日のように続きはまだか? とせっつかれる苦しみ。とはいえ愛読者や観客に帝や女王陛下がいるとなると逃げることも出来ずに、ヒイヒイ締切に追われながら大長編を連載したり、次から次へと新作の脚本を書いていた生前を思い出すと涙が出てくる。  物語は湯水のように湧いてくるのにそれを形にするには、文字を書くための手が足りない。ああ、あんなにもこんなにも書きたいものがある。それなのに腕は二本しかなくてそのうち一本は文字を書くのに適さないなんて。なんという悲劇。  客観的には喜劇極まりないが、本人たちには死活問題。手は疲れに止まるが、時は進む。締切は歩いて来ない、ダッシュで走って来るんだね。  そんな嘆きが満ちた図書館の一室にマスターの共として司書を探しに来た施しの英雄が現れたのは、今から十数分前。マスターの要件が終わると、話題は自然と彼らが盛り上がっていた
やがて芽吹くはオニぐるみ
ひとつ、ふたつ、みっつ。 「何やってんですか」 「ネシコよ」 白い少女が、雪天を衝く木々を見上げながら言った。 「遊びよ。クルミの芽を数えるの」 「へぇ……」 気をつけなければ、髪からつま先に至るまで、全身真っ白な彼女を見失いそうだった。こんこんと降る雪と白銀の大地は、少し目を逸らしただけで少女をかき消してしまう。 森はとっくのとうに実りの時期など終えてしまい、樹木にも足元にも、目印になりそうな胡桃の実はない。 そんな中で、まだ芽吹いてもいない冬の芽を探すなど、随分と意地悪で、地味な遊びではないか。 「親父さんか誰かとですか、そんな遊びしたの」 「…………え?」 どうして? 少女は子供のように、目をまん丸にし振り返った。少女が子供のように、とは変な話だが、いつもの彼女を知れば自ずとわかる。 大人びた、小悪魔めいた、俗世から離れた姫のような。そんな普段の憂いの皮がはがれ、無邪気な遊びをしていただろう、幼い女の子の顔が見え隠する。 「なぁんとなくですよ」 「嘘。理由を言いなさい」 ははぁん、と少女はいつもの上から目線に戻った。 「さては。あなたも意地悪だから分かるのかしら?」 次の瞬間にはもう、くすくすとこちらの顔を伺っている。 お姫様の機嫌も良くなったようで何よりだ。緑のフードの中から、ふっと白い息がもれた。 ホッカイドゥと呼ばれるこの地には、見覚えのある植物がよく生えていた。 季節は以前訪れた秋からすっかり冬へと変わり、近くにあったのでと立ち寄ったこの森も、今はオニランドとともに閉店中のようだった。 地面に落ちていたであろう木の実は、あらかた熊やリスに持っていかれ、枝にも勿論、何もついていない。 おまけに白い頭巾を被った木々は、どれもこれも似たようにしか見えないのだ。 そこから胡桃の実ではなく、次の芽を探せとか、どんな遊びだおい。 森の狩人の目から見ても、もっと他に楽しそうな事はなかったのかと苦笑がこぼれる。 冬の森ならスキーやソリもあるだろう。 しかし、だ。『たかが当たり前のそんなこと』ができない人間だったのかもしれない。 距離感の縮め方も分からずに、自分のやり方でしか子供に伝えられない、そうした不器用な大人はいる。 少女にこの遊びを教えたのは、そんな不器用な、例えば───父親ではないかと思ったのだ。 『あれはオニグルミだ』 節くれだった指が、まだ夏の青い木の実を指し示す。いつもおやつ代わりに食べている、茶色の硬いクルミと、似ても似つかぬ姿に首を傾げた。 『葉や皮、あの青い実の部分。そこに、周りの成長を抑えてしまう毒がある』 クルミは美味しい。刻んでスープに入れてもいいし、ソーダブレッドにたっぷりの、甘い乾しスグリと一緒に混ぜてもいい。 自分達は毒をいつも
リトル・プリンス
リトル・プリンス/星彩のもとへと
リトル・プリンス
リトル・プリンス/星雲のような
 それから数日、ドゥリーヨダナが大人に戻る気配は欠片もなく、「スヨーダナ」もすっかりカルデアに溶け込んだ。元よりさまざまなベクトルで物騒なお子様も多い組織である。人悪のカリスマ(イケオジ)が、人悪のカリスマ(美少年)に変わったところで、一部の美少年好きサーヴァントの心が打ちぬかれる以外に深刻な支障が出ることはない。あえて言うならマスターの周回構成が変更を余儀なくされたことだろうか。  当初はマスターやラクシュミーなどに声をかけたり、弟っぽい(スヨーダナ基準)子どもサーヴァントをたらし込もうとしていたドゥリーヨダナだったが、一筋縄ではいかない様子に早々に飽いて、今ではもっぱらカルナとアシュヴァッターマンの世話になっているところに、好奇心旺盛なサーヴァントが何人か、ちょこちょこ話しかけに行く程度である。  何か悪だくみでもするのではないかと警戒していたアルジュナも、予想以上に大人しくしている様子に早々に警戒を解き、カルナから声をかけられたときに若干のサポートをする以外は、戦い好きのサーヴァントたちとシュミレーションルームに通う日常に戻っている。  傍目には何も変わらない日常を、どうしてだかビーマは落ち着かない気分で過ごしていた。  件のゲーム大会以来、ドゥリーヨダナとの関係は悪化していない。  食堂で出くわせば、嫌味のような皮肉のような文句とともに注文を述べるドゥリーヨダナだったが、なんせ子ども姿の甲高い声なものだから、いくら悪辣なことを言っても毒気がない。生前の三人の弟たちや自分の子どもたちの幼い頃を思い出しながら(行儀悪りぃなコイツ)と呆れて料理を差し出すと、妙に礼儀正しく受け取る様子に、ビーマとしてもつい口元がほころんでしまう。柔らかな顔を向けられたドゥリーヨダナはしかめっ面をしてビーマの顔を大きな瞳でじぃっと睨みつけ、カルナやアシュヴァッターマンに促されながら帰っていくから、大きな騒ぎにもなることはなかった。そして食堂以外で遭遇することはほとんどない。  仲は悪くなっていないが、かといって「仲良くなったね」と笑顔を向けるマスターには首を振る、そんな日々が重なっていた。  そもそも、ドゥリーヨダナとどんな関係性になりたいと思っているのか、ビーマ自身もはかりかねていた。ガネーシャに答えた「〝スヨーダナ〟と仲良くなりたい」という想いに違いはない。胸中に兆した「同い年の従兄弟と、今度こそ普通の友人のような関係になれるのではないか」という期待も嘘ではなかった。  しかし、仲良くといかずともいがみ合わなくて済む現状には違和感ばかりが募るのだった。  ──例えるなら、極上の料理のはずが、肝心のスパイスをひとつ入れ忘れてしまったような。  そうはいっても平和にこしたことはない。ビーマは自身の違和感を笑顔の下に隠し、またその違和感を発散させるように食堂での調理にいそしんで
アルジュナ・オルタと色々な人たち その5
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